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初めての尺玉

投稿日:2017/04/30

株式会社磯谷煙火店 磯谷尚孝

 大学を卒業し、私はすぐこの仕事に入りました。その年は碧南市制35周年の花火大会が開催され、尺玉(10号玉)の注文が例年になく多い年でした。そんな訳で、仕事も忙しく、昼間は3号玉を仕込み、夜尺玉の仕込みにかかっていました。同じ花火でも3号玉と、尺玉はずいぶんと大きさが違います。師匠である父は仕込みの概略は教えてくれたのですが、細かい指示は一切ありませんでした。私はメモをノートに記しながら、試行錯誤を繰り返し作業をしていました。忙しかったのですが、気持ち的には苦痛ではなかったと記憶してます。むしろ色々な事が吸収できる有意義な時間でした。夜だけの作業時間で尺玉10玉を仕込むのに1ヶ月くらいかかったのだと思います。作業も終盤を向かえた頃、父に指摘を受けました。仕込んだ花火を動かすとガザガザと内容物が動く音がするのです!経験があまりない私でも、この状況は好ましい状況でないことはわかり酷いショックを受けました。すべて解体して仕込み直す余裕は時間的にありません。色々考え、手直しする方法もなくはなさそうです。父に相談しましたが、結局そのまま次の工程に進めることになりました。

 そして打揚当日、私はこの尺玉を固唾をのんで見守りました。親星、芯星の中心はずれてましたが、大きな芯も入り思ったほど悪くありませんでした。仕込作業には問題がありましたが、他の工程がうまくいっていたので、大きく花火のバランスを崩すことがなかったのだと思います。そして、次回はもっとうまく仕込作業をしようと心に誓ったのでした。

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