花火と形

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花火と形

寄稿先:形の科学(書籍)

日本の花火

 花火は江戸時代に現在の原型ができたとされる。それから現在に至るまで、日本人の手により様々な改良がなされた。この改良は、主に星(燃焼することにより色を出して燃える部品)の原料薬品に関する改良である。新しい薬品、金属粉等を使うことにより、よりはっきりした鮮明な色彩等に改良が加えられた。しかしながら花火の基本構造自体はあまり変化していない。基本構造は変化していないが、それを応用して様々な形が作られている。

 どうして日本の花火の打ち揚げ前の形状が球状になったかについては、よくわかっていないが、日本の花火が世界的に見て、優秀である理由の一つがここにある。日本の花火は破裂させる前と、破裂後(開花後)の拡大率が高いと言うことである。つまり、球形ゆえに内部に強い火薬を入れることが可能なのだ。ヨーロッパ等で見られる、円筒状の花火では、花火を打ち揚げる瞬間の衝撃で、破裂を起こさないよう弱い火薬しか装填できないのだ。外部からのショックに一番強い形は、球形なのである。

割物花火の構造と星

 日本の花火の典型であり、破裂後丸い形を表す割物花火の構造を紹介する。(図1下は縦の断面、右は横の断面を少し上から見た図)花火が上空で計画された高度に達すると、導火線が燃え尽き、割薬に火を伝火させる。割薬は、星に火を伝える他、燃焼に伴いガスを発生させ、膨張し玉皮、星を飛ばす。直径12cmの4号玉で、星の到達距離は直径100m以上になる。星が球形に並べられているため、その拡大された星(つまり、観衆に見える部分。割薬の燃焼の光は観衆にはほとんど見えない。)も球形になるわけである。つまり、この割薬が外の玉皮に対し、均一の圧力を出し、玉皮も均一の強度を保っているため、星も花火の中心から等倍に拡大されるわけである。球形に広がった花火を特定の一方向から見ると、円になるわけだ。最近テレビなどでヘリコプターから撮った花火の映像をよく目にするが、これもまた円になっているのである。

割物断面図

 花火の星には大きく分けて2種類がある。一つは、星が飛ばされて運動しているとき、自分自身の光跡を残す物(A)と、そうでない物(B)である。2種類の花火の開花の状態を連続写真で撮ったと仮定すると、模式的に図2の様になる。また(A)の星の燃焼速度を遅くし、星を重力による落下をさせると、花火大会で人気の高い花火“冠菊”になる。

型物花火

 円形の花火ばかりでは、観衆のニーズに応えられないため、いろいろのバリエーションが考え出された。このバリエーションの中で、ある特定の物の形を表現した物を型物花火と呼ぶ。この型物花火を理解するために、輪星という花火を紹介する。この花火は、基本構造は、割物花火と同じであるが、星が円形に1列に並べられているだけの花火である。この花火も、導火線が燃え尽き割薬に火がつく時の、玉の位置により観衆には、いろいろの形に見える(図3上参照)。現在の花火の技術では、花火が破裂するときの花火の向きの制御が正確にできないため、様々な形に見えるわけである。

 玉皮の中に、星を“A”の文字に並べた花火もあるが、残念ながら観衆には、ある確率でしか“A”の文字を認識できない。(図3下)この確率を上昇させるために、考え出された方法に花火のある位置に縄等をつける物がある。この方法を使うと、花火の玉は筒から発射され上空に昇る間、縄等が空気抵抗になって、縄の部分がかなりの確率で、地面を向く。つまり一次元的には、ある程度制御可能になるのである。しかし、この制御だけでは、いつも文字を認識することはできないため、ある程度の数の同じ花火を打ち上げないと、多くの観衆に認識してもらえないのである。

図3

 最近でもいろいろの形(ミッキーマウスの顔等)の型物が考案された。平面的な物だけでは、認識率に限度があるため、立体的に星を並べる型物等(トンボ、めがね等)も考案されている。
最初にも書いたように、花火の構造自体は大きな変化をしていないため、新しいと思われる型物も、実は過去において誰かが考えて打ち揚げていたのかもしれない。しかし、アイデア一つで観衆をあっと言わせることも可能なのである。

 新しい形の花火を考案する時に難しいのは、花火は立体であるが、見る人にとって、それは平面として見えることである。そしてその花火を花火のタイトル通り、どれだけ多くの人が認識してくれるかにかかっている。

立体的型物花火

 これまで説明してきた型物花火は、基本的に(B)(図2参照)の星を使う。これには拡大されていく星が、玉皮の中で、どのように並べられていたかがはっきりわかり、観衆の認識率を高めるためである。しかし型物の中でも(A)の星をうまく使い成功させた例もある。たとえばトンボ、蝶である。(図4)トンボは、パラシュートで星を2個吊る(トンボの目)。位置は花火が破裂した中心である。次に(A)の通常より大きい星で羽根を表す。中心から両側へ伸びていく。尾の部分は赤く燃える星を使い赤トンボの完成である。不必要な光がなくシンプルな構成なので、認識率は高いのではないかと思われる。色分けすることによっても認識率を高めることができる。平面的な型物花火は、制作者が目的の物を考えながら作るのに都合がいい。反対に(A)の星を使い、立体的に考えるのは、製作者に想像しづらい面がある。

図4