花火と電気点火

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花火と電気点火

寄稿先:火薬保安(愛知県火薬類保安協会誌)

1.電気点火への移行

 平成21年1月1日より火薬類取締法施行規則56条の4(煙火の消費)が変更され施行されました。この改正により、花火の打ち揚げは遠隔点火が基本の打揚方法となり、法律上大きな変革となりました。この改正は平成15年直接点火で4人の従事者の死亡事故などが、契機になっていると思われます。

 直接点火という言葉は、5年ほど前に、この業界で突然使われるようになりました。これは、打揚筒の直近で人間が作業する点火方式です。この言葉は、最終的に法令には載らなかったので、法令上、直接点火は打揚筒から離隔距離0mの点火方式と言えます。法令上防護措置の条件付ながら、直接点火もまだ許されています。

 この直接点火作業はヒューマンエラーが起こりやすいという側面があります。人間が平常心で物事を行う場合、手順、動作の間違いはあまり起きませんが、花火を打ち揚げている時は多かれ少なかれ緊張状態にあり、いわゆるヘマを起こしやすいのです。早打などグループで打揚作業をする場合、一人のヘマが事故に直結します。ここには保安意識の高揚や、保安教育だけでは防げない問題も潜んでいると考えられます。

 また、打ち揚げ上のトラブルとして考えられる原因には、製造上の問題もあります。つまり花火そのものに問題がある場合です。製造業者としては、製造上の問題でトラブルが生じないように細心の注意を図り製造しているわけですが、残念ながら打ち揚げる花火すべてが100%正常に打ち揚がるとは言い切れません。

 このような点から、事故回避には遠隔点火が有効な方法となると考えられます。最近頻繁に聞く「安全・安心」が叫ばれる社会的要請に応え、これからもこの業界を守っていくには、このことに目を背けることはできません。

 歴史的な理由からなのかもしれませんが、全国的にみて愛知県は直接点火方式の比率が高い地域です。これをすべて遠隔点火(電気点火)に変更して行くには、多くの問題があります。筒、点火器などの打揚機材をそろえたり、それを運ぶ運搬費など、今までにない大きなコストがかかってきます。経済不況と叫ばれる現在それを価格に反映できるか、という点もふまえると移行には時間がかかると思われます。

2.電気点火の例

電気点火の例

 電気点火には、点火器、母線または通信線、電気導火線または点火玉が必要です。今回の省令改正で言うところの遠隔点火は、筒から20m以上離れることが必要です。地形的条件がそろっていて、更なる安全率を考えると、より筒から離れた方が安全性も高まるし、落ち着いて点火作業ができます。

 また電気導火線、点火玉は輸入品も含めると多くの種類があるようです。これらはそれぞれ電気的、感度的にも特性を持っているので、慎重な選定が必要です。

3.電気点火の注意点

 事故を回避するために電気点火は有効な方法ですが、現在電気点火への移行期間ということもあり、それによる事故も散見されます。一つは電気導火線または点火玉の感度の高さから来る問題です。大会終了後、発射できなかった花火を筒から取り出す際の摩擦等で、花火が発射されたという事故も起きています。500gのおもりを1mの高さから落とすと、多くの点火玉は発火するという実験結果も出ているように、点火玉の感度はかなり高いと考えられます。

 また昨年は、ゲリラ豪雨という言葉も生まれましたが、打揚準備中に雷により花火が発射されるという事故も報告されました。今まで煙火の電気点火は、電気発破の法令の準用がされてきました。そのためか、雷が間近に迫っている時でも、電気回路の短絡が必要と誤解されてきました。しかし、今回の省令改正で煙火独自の電気点火の条文が加えられたため、短絡の義務はなくなりました。むしろ構造物解体用発破の施行規則に書かれているよう短絡させない方が良いということが、平成20年改定の「煙火の消費保安基準」に書かれています。

 準備作業終了後、電気回路の導通または抵抗試験を行うわけですが、テスターの電流で発火してしまう危険もあるので、テスターの選定も頭に置いておかなくてはなりません。また、点火器の誤操作で、準備中に花火が発射されるということも考えられます。自分にも苦い経験があり、このことも含め準備作業のルール作りが必要です。

 保安という面から少し離れますが、たくさんの電気点火を行う場合、どうしても母線が煩雑になります。準備作業中はトラック等重量車両が行き来し、母線を痛める可能性があります。複数業者が同時に作業する場合、母線の保護には特に気を遣います。このあたりも事前に業者間でルールを決めれば、スムーズな作業ができます。

 このように充分な知識、情報を持って作業しないと保安のための電気点火でなくなる可能性もあります。

4.電気点火の演出効果

 現在、多くの煙火販売業者は電気点火での打ち揚げをしております。過去を振り返れば、遠隔点火をすることによる保安上の理由というより、観客を楽しませる演出上の理由から電気点火を使い始めたと言う方が正確です。離れた場所から同時に花火を打ち揚げるには、電気点火は欠かすことができない方法で、いわゆるワイドスターマインと呼ばれ、最近多くの花火大会で見ることができます。

従来のスターマイン

 従来のスターマインは延時(時間調整のためのタイマー)に導火線を使っていました。もちろん、これは慣れ親しんだ花火打揚方法ですが、導火線を使っている限り時間的精度は期待できません。これに代わり、電気を流すことにより花火を発射させることのできる電気導火線を使うことで、時間をコンピューターで制御し、花火を次々に発射させていくことができます。

 電気点火が、この業界で一般化する前、電気発破で使われる点火器の流用がなされていましたが、現在煙火業界ではコンピューターを組み合わせた煙火専用の点火器が広く普及しています。音楽とシンクロさせることでエンターテイメント性は増大して、数分間の決められたタイミングに合わせ0.1秒以下の制御をし、1,000点を超える点火が行われることもあります。爆発的に増えていく点火数に、点火母線では追いつかず、点火場所の端末と点火器本体が通信をして打ち揚げる点火方式も一般化しました。急速な進歩で驚くばかりです。

5.メロディー花火 

 以前から花火に、音楽を取り入れようとする試みはありました。しかしながら、従来花火の発射時間を調整するのに導火線を使っていたため、発射時間の精度が悪く、なかなか音楽花火が成功しませんでした。そのため音楽をBGM的に取り入れ行っていました。

 弊社で行っている音楽シンクロ花火、豊田おいでんまつりでの「メロディ花火」は前者の方法とは異なり、音楽と花火の完全なシンクロを狙っています。音楽が静かな曲調の時には静かな種類の花火を使い、曲のアクセントのところでは一斉に花火を打ち揚げます。音楽の効果により、花火を観客に、よりアピールすることができます。つまり、音楽と花火の相乗効果を狙った一つのショーです。この方法を可能にする発射時間調整には、従来の導火線ではなく、多量の電気点火とコンピューター制御を使います。幅350mの間に花火を仕掛けた4分間の花火ショーです。花火の数は同じでも、ワイド演出の方が観客に向け、よりインパクトがあります。

 これは平成2年から始めましたが、当時は筒、母線の設置、花火の装填が効率よくできず、一カ所での準備に比べ非常に時間がかかったのを覚えています。花火の打ち揚げ準備は基本的に当日しかできません。限られた時間の中で、いかに効率よく準備を行うか、試行錯誤の結果現在に至っています。

6.これからの電気点火

 ここ数年、煙火の事故は年間30件くらいで推移しています。そのため、煙火業界は相変わらず事故が多く、いっこうに事故件数が減らない、と監督官庁から言われ続けております。しかし、最近の煙火の事故報告をみると少々うんざりします。事故の定義がないためなのか、わずかな枯れ草火災などが事故件数として上がってきます。もちろん事故件数を減らすのも目標ですが、保安の本質を考えれば、事故の程度も重大事故を軽微な事故へ変えていく方向性で望むべきだと思います。

 電気点火に関わる事故も今後増えていくことが予想されますが、遠隔点火であったおかげで軽い事故で抑えられたという事例も評価したいものです。従事者が怪我を負ったら間違いなく事故扱いとなります。遠隔点火ではその可能性を減らすことができます。保安に関してより安全で、電気点火の利点を生かした演出で、観覧客により喜んでいただける将来の花火に、この電気点火をうまく利用していきたいものです。