製造工程

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製造工程

ここでは打揚花火の代表「割物」の製造工程と構造を説明します。 工程は主に4つの配合、成形、仕込、仕上に分類できます。

1.配合工程

花火の元となる薬品を計量して、粉末の混合薬を作ります。

 決められた組成比率の薬品を計量して均一にします。花火の現象によって違いはありますが、おおむね5~10種類の薬品で一つの燃焼の現象を表します。次にふるいを通すことで混合しまた不純物を除きます。この混合薬の中に粉末の水溶性のり成分であるみじん粉を入れておきます。この工程は生の火薬に触れているわけですから危険な作業です。以前と比べると、酸化剤も摩擦、衝撃感度の低い物を使うようになってますが、それでも安全に関して気の抜けない作業です。
 花火の原料は主に酸化剤可燃剤色火剤に分類できます。酸化剤には過塩素酸カリウム、硝酸カリウムが主に使われます。可燃剤は非常に種類が多く、主に樹脂粉末、木炭の粉末など様々です。色火剤はその花火の色を決める金属化合物です。 例えば赤は炭酸ストロンチウム、青は酸化銅等、色によってこの化合物を変えます。
 炎色反応は金属元素で、花火の場合は金属化合物と違いはありますが、よく似ています。つまり花火の場合、酸化剤と可燃剤でバーナーを作りその中に金属を入れることで、金属特有の炎の色が見えるのです。また、ろうそくなどが燃えるのと違って、花火には60~70%の酸化剤が入っています。ろうそくの火は酸素がなくなると消えてしまいますが、花火は酸素がなくても燃えます。

2.成形工程

配合工程で、よく混合され均一になった配合薬を固形化し、花火の一番重要な部品を作ります。

 配合工程で均一になった粉状の混合薬に、水を入れ練ります。配合薬にはみじん粉が入っているため、木枠に入れて切った後、天日で乾燥させると固まります。この方法で作った星のことを、「切り星」と言います。乾燥後、ミキサーに切り星を入れ回転させながら、水を入れます。星の表面が溶けだしたところで配合薬を振り掛けます。これで、星は少しだけ大きくなります。その後、天日で乾燥させるとみじん粉の成分で固化します。この作業を繰り返すことで、星は徐々に大きく球に近づいていきます。この方法で星を作ることを星を掛けるとか星掛けといい、できた星を掛け星といいます。

星掛け作業により、日本の花火の特徴である色の変化するを作ることができます。花火の大きさによって、星の大きさも決まりますが、おおむね三層の構造をしています。例えば右図で説明すると、中心は(花火用語では白色のことを銀と言います)の切り星で立方体の形をしています。その上に(同様に赤のこと)の色を出す層、更に(炭が燃える時に出す暗いオレンジ色)の層、最後に着火薬の薄い層があります。燃える時は、製造工程とは、逆の順序で燃えいくので菊-紅-銀と色を変えながら燃焼します。 この星で花火を作ると、花火の名前は菊先紅銀乱になります。


星(10号菊先紅銀乱)の地上燃焼

 破裂により星が上空で飛ばされる時、最初は秒速100mを超える速度になります。この風を受けても炎が吹き消されないように、最も燃えやすい着火層のコーティングがなされています。
 この星掛け作業は、一度に高い圧力をかけて固めるのでなく、時間をかけゆっくり圧力をかけます。一度に高い圧力をかければ、火薬ですから危険を伴います。星掛け作業は、安全で高い密度の星を作ることを可能にしています。安全性と性能を両立させる合理的な作り方であることがわかります。
 もう一つ日本の花火の特徴として、星の均一性が挙げられます。花火の玉に何百と入っている星が一斉に色を変える様は、人間がマスゲームを行う時のような統一性の美しさがあります。その為、すべての星は均一に作ってあります。

3.仕込工程

成形工程で作った割薬を、玉皮に装填します。

 最初に成形工程で作ったを、ボール紙等で作られた玉皮の表面に並べます。玉皮には導火線が固定されています。次に薄い紙と共に割薬の層の内部に入れます。半皮づつ割薬を詰めて、最後に2つの半球を合わせ一つにします。

 上図は割物花火で星が二層になっている、芯入花火の断面図です。花火は、打揚火薬の力で上空に発射され、同時に花火に固定されている導火線が燃え始めます。花火が上空まで上りつめた時、導火線は燃え尽きて割薬に火を伝達します。割薬が燃え始めると、星に火を伝達するのと同時に、膨大なガスを発生し花火の外殻(玉皮とクラフト紙)を膨張力により破ります。それに伴い、星は玉に入っていた時のお互いの位置関係を保ちながら広がっていくのです。この破裂の過程は、ほんの短い時間で起こります。
 星も玉皮も球の形状をしています。球は外部からの力に非常に強い形です。打ち揚げられる瞬間、また花火が破裂する瞬間、花火内部には強い衝撃がかかります。この衝撃で発火したり、破壊されにくい形状が球なのです。たとえば衝撃に耐えられないと打揚げの瞬間、花火が破裂してしまいます。外国の花火のように円筒形では、強い衝撃に耐えられるように弱い火薬を使わなくてはなりません。日本の花火の優秀性の一つに、開花面積の大きさがあります。球という形状がこれを可能にしています。

4.仕上工程

仕込工程で出来上がった玉の表面にクラフト紙を張り、製品として完成させます。

 クラフト紙のりを付け玉皮の表面に貼っていきます。何回か貼り付け天日で乾燥させます。この作業を何度も繰り返し、花火は完成します。クラフト紙を貼る前に、花火に火をつけても大きな破裂は起こりません。内部の割薬がガスを出し膨張しても、ガス圧が高まる前に弱い部分からガスが抜けてしまうからです。クラフト紙を張り終えた状態では、内部のガス圧が十分高くなった後に破裂が起こるため、星を遠くへ飛ばすことができます。花火の大きさと種類によって、クラフト紙を貼る回数を変えます。割薬の強さと外殻の強さのバランスをとることが、良い花火を作るポイントになります。

  

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