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花火は芸術か?

投稿日:2024/07/01

株式会社磯谷煙火店

磯谷尚孝

 今回書くことは20年以上前の話で、日本煙火芸術協会の総会が恐らく鹿児島県で開催され、その夜の懇親会での出来事です。“花火は芸術だ“と言う時、私は相当覚悟を決めないと言えないでいました。というのは花火の業者は都合のいい時だけ、このようなことを言いがちだからです。懇親会の中で小幡清英さん、青木昭夫さんらと花火は芸術なのかどうかで話し込んでいて、私はそれに否定的な立場をとっていたのです。誰かが強く主張したと言うことはなく、その話はそれで終わりました。

 翌日皆さんと薩摩切子の展示物を見学した時に、確か青木さんだったと思いますが「磯谷さん、この薩摩切子は芸術とは言えないのかい?」と聞かれました。すぐ返答はできず、確かに芸術と言えるかもしれないなあと思って家に帰り国語辞典で調べてみました。

【芸術】①特殊な素材・手段・形式により、技巧を駆使して美を創造・表現しようとする人間活動、およびその作品②芸・技芸。わざ

とあり、花火職人はどちらかというと技術者と思っていたのですが、“花火は芸術だ“というのもありなんだと知りました。つまり究極を突き詰めた技術は芸術と言えるということなのでしょう。

 もう一点これは私の勘違いがあるかもしれませんが、作品を作ってそれの対価をもらっているのに芸術作品と言えるのかという疑問でした。これは大曲の佐藤絋二さんが、過去芸術家という人達も皆さん作品を売って生活していたのだから花火を芸術と言うのに何の差し支えもない、と教えてくれました。この点は納得しました。

 話を変えて陶器は芸術かと問われた時を考えてみます。陶芸家が作る作品は確かに芸術というにふさわしいでしょう。ただ、たくさんの人が普段使いする陶器、つまり機械で作られた量産品は芸術とは言えませんね。だから、花火は芸術であると言い切るのは無理がありますが、花火の中には作者が心血をつぎ込んで作られた芸術といえるものがある。この表現が一番腑に落ちます。

yodogawa2023

金子氏撮影