お知らせ
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投稿日:2019/02/01
株式会社磯谷煙火店 磯谷尚孝
少し前に外で夕食をとっている時、そのお店から花火がよく見えることからシェフが花火大会の発数について語り出しました。年に何回も同じ場所で開催される花火大会がそこから見られます。秋の花火大会は1万3,000発だけど、夏の花火大会は3,000発だから、秋の花火大会の方が凄くて大きな花火大会だという主張でした。そのレストランでは確かに花火は見えるには見えるのですが、何キロも会場から離れていて、もともと花火を評価できる位置にありません。「あーあ、またか!」と内心思い黙って店を後にしました。シェフの比較した花火大会を私は知っていて、花火代は夏の方が多いと推測しています。主催者が発数を公表すると、花火をよく知らない人たちは発数に誘導されます。
私たちが担当している花火大会ではありませんが、主催者に花火大会の発数はどのように公表しているのか聞いたことがあります。主催者の一人はライバルの花火大会の公表発数をにらんで決めていると、こっそり教えて下さいました。まあ、誰も発数を数えることはできないので、クレーム問題になることはありません。
また、以前花火大会の発数の多い順に、ランキングされた記事が情報誌に掲載されたことがあります。マスコミが主催者同士を煽るようになっているのかもしれません。因みに花火業者同士では花火大会の規模を示す指標は花火代で、発数の話になることはありません。最近は非公表とする花火大会も増え、べらぼうに水増しした発数を公表するより良心的ですね。たとえ各花火大会が正確な発数を公表したとしても、10号玉は3号玉の10倍以上の花火代になります。発数だけで花火大会の評価はできません。
花火の発数と感動が比例するのなら、こんな簡単なことはありません。つまり花火代の多少により感動が違ってくるので、花火師の役割は重要ではありませんね。以前大曲の大会提供を企画されていた方からこんな話を聞いたことがあります。自分が企画した中で一番反響が大きかった時は、花火の量が一番少ない時だったようです。花火の量が少ないからこそ、頭と知恵を絞って企画したので反響が大きかったのではないかと推測されていました。どんな花火でも花火代の縛りはあります。その縛りの中で、いかにメリハリをつけ観覧者を引き込めるかどうかが花火師の腕の見せ所です。発数に惑わされていると、公表発数が少ないけれど、本当に価値のある花火大会を見逃す弊害がでてくるのではないでしょうか。
記事の論点は違いますが、以下は過去に書いたものです。
①は8号玉(直径24cm)です。上空280mで開花し直径は250mになります。4号玉(直径12cm)の千輪菊という花火は、中に小さな花火が20個入っています。②はその中の一つです。③は花火の光る部品で星と呼ばれています。主催者のカウントの仕方はまちまちで、②の花火は4号玉の一部だから1/20発と普通カウントしますが、これを1発とカウントする主催者もいます。③に至っては言わずもがなです。③を1発とカウントするなら、①は500発以上になってしまいます。
全国一の規模を誇る花火大会として知られる教祖祭PL花火芸術は、2008年からそれまでの10〜12万発を2万発の発表に変更しました。カウント方法を変えただけで規模は今までと変わりません、と主催者はコメントしニュースになりました。
こんな違いが起こるのは、誰も花火の発数を数えられないことと、カウント方法にルールがないからです。年間30回以上花火を見ている愛好家は、発表の発数は参考にしていません。発数と感動は一致しなことをよく知っているからです。