磯谷煙火店

（株）磯谷煙火店　磯谷尚孝

　花火の歴史は事故との歴史とも言えます。製造中の大きな事故は激減していますが、花火打ち揚げに関わる事故はまだまだ毎年報告されています。人身事故を含め大きな事故を起こした事業者の多くは、廃業の道を選びました。幸いなことに私の先祖たちは、そんな時代を無事に通り過ぎてきたのです。

　同業者仲間で神社仏閣を訪ねると、一般の方々から比べ皆さんとても信心深い方が多いように感じます。常に危険物を扱っている仕事柄からなのでしょう。

　ここ10年以上遠隔点火で打ち揚げ作業をしているので、以前と比べ事故のリスクを実感することが減ってきていますが、それでもシーズン前は自分自身がとても神経質になっているのを感じます。事故以外にも心配の種はいくつも沸き上がってきます。

　私の普段の生活はとても信心深いと言えません。しかし先代が亡くなって以来、花、線香など何の供え物もありませんが、毎年シーズン前には墓参りをしています。先祖が花火に関わり始め130年、きっと色々の経験をしてきたのでしょう。墓参りをすると、今の自分の境遇が大したことなく思え少し安心します。