お知らせ
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投稿日:2016/07/28
(株)磯谷煙火店 磯谷尚孝
当サイト花火ライブラリー「花火Q&A」の中に、「煙火(えんか)」ってどういう意味なの?という項目があります。「花火を法律用語でも「煙火」と言います。堅苦しい感じがするかも知れませんが、 花火会社はほとんどこの名称を使っています。**煙火店、**煙火、**煙火工場、**煙火製作所などです。意外に**花火という会社は、珍しいのです。」と回答してます。花火と煙火は同義語ですが、花火の業界にどっぷり浸かっている私は、意外に煙火という言葉に疑問を感じないでいました。
15年くらい前から自分のルーツ、つまり自分の先祖がどの時代にどんなことをしていたか知りたくて、磯谷煙火店に関する歴史資料を集めています。資料は新聞、花火プログラム、書籍、雑誌、写真などです。時系列に並んだ資料リストを改めて眺め気づきました。はは〜、そうだったのか!
磯谷煙火店初代が初めて公的印刷物に記されたのは、明治25年(1892)豊川稲荷花火プログラム「獻發烟火第壹號目録」でした。「烟」と「煙」は同じ文字と考えていいでしょう。大正以前の資料をよく調べても花火という言葉は見つからず、すべて「煙火」と記されています。最初に花火という言葉が現れるのは、昭和7年(1932)「養老公園で全国花火競技大会」と見出しのついた新聞記事です。また、昭和5〜7年に撮られたと予想される前工場の工室にカタカナで「ハナビ」と書かれています。
昭和29年(1954)花火大会いよいよきょう決行と見出しのついた新聞記事があります。これ以降煙火という言葉は使われなくなり、花火という言葉に置き換わっていきます。つまり花火という言葉はそれ以前にもありましたが、一般的に使われ始めたのは昭和20年後半くらいからだと考えられます。それ故、昭和25年(1950)に作られた花火に関する法律、火薬類取締法では煙火と記されているのでしょう。その名残として、長野えびす講煙火大会という大会名称があるのですが、珍しい例です。ちなみに中国でも花火は「烟火」の文字が使われます。
これは私の予想ですが、「打ち揚げ」と「打ち上げ」の関係も同様のことが言えるのではないかと思っています。火薬類取締法では丸い花火(球状煙火)は打揚煙火と書かれていますし、「打揚」「打ち揚げ」の文言が頻繁に使われています。きっとある時期以降、打ち上げという言葉が一般に使われ始め、打ち揚げの言葉は廃れていったのだと推測します。
話は少しそれますが、花火は自発的に打ち上がるのではなく、人間の手をもって打ち揚げるものだ、という業界の先輩の話が印象に残っています。また、花火大会で使われる花火を直接的に示す言葉が日本にはありません。あえて言えば「煙火玉」なのでしょうが、私たちはただ「玉」と呼んでいます。中国では礼花弾、英語圏では(fireworks) shellと言われます。
私はこれからも「煙火」と「打ち揚げ」の言葉を大切に使っていきたいと思っています。
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