磯谷煙火店

株式会社磯谷煙火店　磯谷尚孝

　取材なんかで花火作りの楽しさは何ですか、とよく聞かれます。これに適格に答えるのは、なかなか難しいものです。転職してきた社員が以前こんなことを漏らしていたのを聞いたことがあります。工場で車の部品を作っていたのだけれど、それがどういう役割をはたし社会に役立っているかよくわからなかった。それに比べ私たちの仕事は粉末の原料から、花火が打ち揚げるまでずっと見守っていて、その作業がどう役にたっているかはっきりわかります。

　どの工程も花火あるいはその部品を実際手で触って作業することが多いので、自然と花火に愛着、愛情がわきます。ちょうど子どもを育てているような感覚かもしれません。

　愛情をもって作り上げた花火も思うようにいかないと、観覧された方に何とかもっと喜んでいただける花火にしたいと思います。そこから色々な試行錯誤が始まります。一朝一夕にはいきませんが、上手くいったときの達成感、満足感はひとしおです。ただ上手くいくのはほんの僅かで上手く行かないことの方が遙かに多いのですが、その過程も花火作りの楽しさの一つかもしれません。

古川和宏氏撮影