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花火の原料

投稿日:2017/02/26

株式会社磯谷煙火店 磯谷尚孝

 「中国では良い原料が手に入らないので、中国花火は日本花火を超えられない。」と以前中国の花火工場の方が仰ってました。しかし、日本ではおもちゃ花火メーカーの製造量が激減していて、花火原料の需要が減少しています。花火原料は概ね化学薬品、金属、樹脂、木炭などです。化学薬品にしても、他の産業のおこぼれを利用しているような状態で、そちらの産業で必要がなくなれば、たちまちその原料供給はストップしてしまいます。また、化学薬品も色々な粒度があり、それが燃焼に大きく影響するため、同じ化学名がついているからそれで良しとはいきません。また、花火では木炭が様々な部分で使われていています。木炭の元の樹木に至っては自然物ですし、木の種類、木が育った気候、産地、作り方によって同じものはなく、更にやっかいです。原料供給会社から、「今日からこの原料は供給できなくなりました。」と毎年のように連絡を受けます。花火の燃焼は原料のバランスの上に成り立っています。代替品を使う場合、新たな組成バランスを見つけるため、実験、試作が必要です。

 

material 私たちが花火を作っている時、開花した後の現象はわかりません。唯一認識できるのが、作っている部品の“見た目”だけです。この見た目に惑わされます。部品が綺麗にできていれば、綺麗に開花するとは言えないからです。見た目が同じでも開花した現象が全く変わってしまった、と嘆くこともしばしばあります。どうしても科学的数値から開花現象を見る必要が出てきます。

 

 原料が変わっても、花火は変わらないように見せるのが私たちの腕の見せ所ですが、その労力を少しでも減らしていきたいものです。その労力が減らせれば、次の開発へと時間を割けます。

 

 平成27年日本煙火芸術協会の交流会で、原料の不安定性が議題にあがりました。私たちだけではなく、すべての花火製造会社にとって最重要課題であること実感しました。今原料のことで悩み苦しんでいることが徒労に終わらず、次世代の日本の花火に良き情報とすることができないか模索を続けています。