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花火の開発、改良

投稿日:2021/04/19

株式会社磯谷煙火店 磯谷尚孝

 日本における花火の歴史は1613年徳川家康が中国花火を見物した以降始まったと考えられますが、江戸時代初期はおもちゃ花火の時代で、こと丸く開く打揚花火となると江戸後期1800年くらいから始まったと思われます。明治維新により海外からの薬品を利用することで、この花火に色彩が加わりました。花火の構造については高々200年、色に関しては140年くらいの歴史です。その中で日本の花火師は色々改良を加え現在に至っています。もちろん現在を生きる私達にも花火の開発、改良の使命があります。今回は他と差別化できる花火の改良について、構造と色という観点からの話です。

 最初に色の改良についてです。火薬が燃える時の色は原料薬品により決まります。原料薬品の選定、またその組成比率を決めることになります。明るくしたい、色を濃くしたいなどは、人間の目で判定することとなるので、トライアンドエラーの繰り返しで、労力や時間がかかります。ただ、一旦うまく開発、改良できれば、他の花火と差別化がしやすい側面があります。というのは、他の花火師がその色を見ただけで組成比率までわからないからです。時々花火師がインタビューを受け、「花火の良し悪しを決めるのは星を作る星掛け作業にある。」と答えているのを見受けます。工程上はそうなのかもしれませんが、実は更に源流をさかのぼり、原料組成が一番色に関して影響を与えているのは間違いありません。ただ、花火は色々なバランスの上に成り立っているので、その組成により星掛け工程を通常と変えることで、うまく改良ができた例もあります。私達の色で言えば‘銀’などがそれにあたります。原料組成は同じでも、星掛け作業を見直したことで成功しました。

 

花火の原料

 

光の宝石 次に創造花火にフォーカスした構造の開発、改良です。例えば花火競技大会で様々な花火を見ますが、構造、つまり星、部品が玉皮の中にどのように配置されているかは、95パーセントくらいまで想像ができます。多くの花火は見ただけで再現が可能です。色々頭を悩ませ、他と差別化するために5パーセントの領域の花火を目指しますが、開発され尽くされた感もあり中々いいアイディアは出てきません。そして差別化された5パーセントの花火でも、一般の観覧者にインパクトを与えられるかは別物なので、それができなければお蔵入りとなります。私達が開発した‘光の宝石’などは、目的が違う改良の副産物から生まれた例もあります。


 昔の花火業界は情報伝達が遅く、情報交換も盛んでなかったため開発、改良はゆっくりしたものであったと予測できますが、現在はこのスピードが極めて早くなっているのでしょう。そんな中でブレイクスルーできる革新的な花火の開発はとても難しいのです。また、構造、色以外にも花火は色々な要素から成り立っていて、改良が行き詰まった問題も山積みです。