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女性好みの花火

投稿日:2016/10/31

株式会社磯谷煙火店 磯谷尚孝

 誰が言い始めたかわかりませんが、磯谷煙火店の花火は女性好みだそうです。自分としては喜んでいいのかどうか、最初に聞いた時どう理解したらよいか戸惑いました。もちろん男性の声援や、励ましの声もよく届くので一概には言えないと思いますが、世の中には男女半々いて作り手側としては、男女問わず万人に喜んでもらえる花火が理想だと考えていたからです。

 あるクライアントの女性が花火を見た直後、「今回の○○(玉名)はいつもと色が違ったね。」と指摘され驚いたことがありました。更にいつもの「青」の方がよいとご意見を頂きました。花火のある部分にいつもは「青」を使うのですが、その時は星の在庫の関係から「紫」を使ったのでした。私自身見過ごしていました。色の原料組成的には、紫と青は非常に似通っています。後で知ったのですが、女性は男性より色に敏感だそうです。その女性いわゆる花火通といわれるまでには達していらっしゃらないのに、色の違いを即座に言い当てました。きっと男女の感じ方の違いなんでしょう。同じ花火を見ていても、感じ方は千差万別であることを思い知らされました。

pattern-heart 私たちは時として型物花火も作りますが、若い女性に聞いたら「ハート」は別格だそうです。私にとって「ハート」は型物花火の一種類に過ぎないのだけれど、彼女にとってはそうではないらしいです。また「ハート」は紅(赤のことを花火用語で紅と言います。)ではだめで、ピンクでなければならないとか・・・。紅の「ハート」は心臓を連想するそうです。女性好みの花火は奥が深〜く、まだまだ修行が足りません。

 私が花火作り、花火演出を始めた頃、母は「悪くはないけど、あなたの花火は地味ね〜。」と何度か言われました。これにも戸惑いました。だって多くの人が花火に派手さを求めていることは十分認識していたからです。それ以降地味さを脱却するため色々トライしましたが、なかなかそのスタイルを変えることはできませんでした。現在もそれを引きずっています。派手さを求めるあまり、自分が良くないと思うことはできません。誰かが「花火は作り手を映す鏡だ!」と言っていました。今では自分のスタイルを貫き、それを極めようと思っています。

 どうして磯谷煙火店の花火は女性好みなのか、ある女性に聞いたことがあります。どうやら花火に繊細さを感じるそうです。自分としてはあまり意識してませんでした。でも、せっかく世に送り出す花火、細かいところに気を遣うのは当然です。繊細さをウリにするのも悪くはありません。そういえば、花火競技大会の審査員は圧倒的に男性が多いのですが、女性の審査員が増えることを歓迎します。(笑)きっと結果も変わってきますね。

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